卵子提供に対する日本産科婦人科学会の会告とは?

卵子提供に対する日本産科婦人科学会の会告とは?
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卵子提供による不妊治療は、世界的に見ても成功例が多いと言えます。日本では卵子提供による不妊治療に対し、明確な法整備が行われていないため技術が海外ほど発展していません。しかし、日本産科婦人科学会は卵子提供に対し会告を出しています。その内容とはいったいどのようなものなのでしょうか。今回は、日本産科婦人学会が出している卵子提供に関する会告についてご紹介します。

卵子提供に関する流れについて

卵子提供に対する日本産科婦人科学会の会告とは?
日本産科婦人学会とは、産婦人科に関する学術研究団体のことを指します。日本は、1948年から精子提供による人工授精が行われ、不妊に対する治療を行ってきました。人工授精とは、提供された精子を女性の胎内に流し込み受精を促す不妊治療です。精子提供による不妊治療が日本で開始した後に、卵子提供による不妊治療が技術的にも行えるようになりました。

精子提供による不妊治療と卵子提供による不妊治療の大きな違いは「受精を促す方法」です。精子提供による不妊治療が女性の胎内に精子を流し込むことで受精を促すのに対し、卵子の提供を受けて受精を促す場合は体外受精が必要になります。体外受精とは、女性の体外で卵子と精子を受精させ、胚を女性の胎内に戻して着床を待つ方法です。体外受精を成功させるには、人工授精を成功させるよりもさらに高度な技術を必要とするのが特徴です。

不妊に悩む人の希望となる精子・卵子提供による生殖医療ですが、倫理的な問題について日本では長い間議論が重ねられてきました。日本には「精子や卵子の提供によって子供が生まれた場合の親子規定」や「出自を知る権利」などに関する法律が定められていません。日本産科婦人学会は、生殖医療が発展することによって起こるこれらの問題に対して「国の関与」を強く求めてきました。

その結果、1998年には厚生科学審議会の先端医療技術評価部会において「生殖補助医療技術に関する専門委員会」が設置されました。委員会での審議の結果平成12年12月に「精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療のあり方についての報告書」が作成され、精子や卵子、胚を提供する生殖医療について国側が見解を述べました。その内容は「精子の提供を用いた人工授精以外の生殖医療は、必要な整備がなされるまで実施すべきでない」というものです。日本産科婦人学会は、国の発表を尊重する見解を出しました。

日本産科婦人科学会の基本方針

精子や卵子の提供を得て行う不妊治療に対して日本産科婦人科学会が持っている基本的な方針は「安全性」「人間の尊厳への配慮」「子供の福祉優先」「商業主義の排除」などを挙げています。

「安全性の確保」は、母子の健康に害を与えるような生殖医療を避け十分な技術と設備を備えることで守られます。卵子の提供による不妊治療が、精子の提供による「不妊治療ほど盛んに実施されない原因は、卵子提供による体外受精を行う技術が高度であり治療を実施できる病院が限られていることも関係しています。

「人間の尊厳への配慮」とは、不妊治療の現場で卵子提供が行われることに対して持ち上がる、倫理的な問題への見解を示すものです。卵子の提供による不妊治療が開始した頃から「卵子の提供によって産まれた子供の母親は卵子を提供した人と産んだ人のうちどちらになるのか」「人の手によって受精卵を作り出しても良いのか」などの倫理的な問題が世界中で議論されてきました。日本産婦人科学会は「人間の尊厳への配慮」と「子供の福祉を優先」を基本方針に掲げていることから、倫理観の問題を軽視せず捉えるとともに生殖医療の発展によって産まれてくる子供の考えの在り方も重要視するという見解を示していることがわかります。

しかし、実際には精子提供によって産まれた男性が、生物学上の親を知りたいと届け出たところ資料が残っておらず、意思が尊重されなかったという事例もあるようです。「商業主義の排除」とは、生殖医療をビジネスと捉える考えを排斥するための方針です。不妊治療の現場で卵子や精子の提供が一般的になった場合、卵子や精子を商品のように扱う人が現れるかもしれません。そうした考えは人間が持つ倫理観に反しており、新たな問題を生む可能性もあります。

学会からJISARTへの回答は?

卵子提供に対する日本産科婦人科学会の会告とは?
JISARTとは、不妊に悩む夫婦に対して安全で正確な生殖医療を提供する団体のことを指します。JISARTは不妊治療を専門とする病院が集まり結成しました。卵子や精子の提供を得ることによって行う生殖医療に対し、日本の法律は整備されていないためJISARTは団体で独自のガイドラインを設けて治療を実施しています。

2007年に、団体に加盟している病院から卵子提供による体外受精に関する申請が提出されます。卵子提供による体外受精の申請は2件あり、実施についてJISART内の倫理委員会にて9回に渡り議論が重ねられました。慎重に審議を行った結果、卵子提供による体外受精の申請を受理して治療を行う方針を固めた団体は、実施前に日本産科婦人科学会と厚生労働省に承認を仰ぎました。

日本産科婦人科学会と厚生労働省は「承認を行う立場にない」という回答をします。これは、法整備が確立されておらず、生殖医療にまつわる問題が未解決にあることを表している回答だとも捉えられます。結果的に、申請があった2施設では、友人や姉妹からの卵子提供を受け体外受精を実施し2例とも出産に至りました。2012年の4月には、JISRATに加盟する施設で168組以上が卵子提供による体外受精を行い、73件の出産に繋がったのです。卵子の提供による生殖医療は、結果として81人の子供を出産に導きました。

今後の展望について

日本産科婦人科学会は「精子や卵子、胚の提供による生殖医療の整備は、国が行うもの」という見解を示しています。よって、日本産婦人科学会は卵子提供による生殖医療のガイドラインやカウンセリングなどを含めた枠組みの整備を国に求め続けていく姿勢を取っていることが読み取れます。ただし、生殖医療に対する倫理観の問題は議論を重ねても正しい答えを導き出すことが難しい問題でもあります。日本国内で安全性が高い卵子提供による不妊治療を受けられるように国や学会の発表を見守りたいところです。
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