人工授精での妊娠!精子の運動率が低くても大丈夫?

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人工授精による妊娠は、女性側の要因のほか、男性の精子の質も大きく関わっています。これまで不妊治療というと、妊娠するのが女性ですのでどうしても女性側に原因がある、女性だけががんばっている、というイメージがありました。しかし、近年の研究で男性の精子運動率によって妊娠率が左右されることがわかっています。精子の運動率が妊娠の成功率にどのように関わっているのか、これから一緒に勉強していきましょう。

人工授精が適用されるのはどんなとき?

不妊治療の一種である人工授精は、有効な場合と効果的ではない場合があります。一般的に人工授精が適用されるのは、次の4つのケースです。1つ目は、精子濃度が薄かったり運動率が低かったりなど、男性の精子に問題がある場合。2つ目は、男性の射精障害や勃起障害、及び女性の膣狭窄により性交が困難な場合。3つ目は、弱酸性に保たれている子宮頚管粘液の酸性度が強すぎたり粘度が低すぎたりして、精子が子宮内に侵入するのを妨げている場合。4つ目は、タイミング療法を繰り返しても妊娠せず、不妊の理由がわからない機能性不妊である場合です。逆に、人工授精が効果的ではないのは、精子に問題がなく正常に運動をしている場合と、女性の年齢の高さが不妊の原因になっている場合です。精子に問題がなければ不妊の原因は女性の体内にある可能性があり、人工授精前に女性の身体を整える必要があります。また、女性の年齢が高い場合、自然妊娠でも人工授精でも妊娠成功率はとても低くなります。不妊治療を継続するにあたり、さまざまな検査を行って不妊の原因を探っていきます。大切なのは、原因にあった治療を行うこと。どんなに効率の良い療法でも、見当違いな治療を行っていては、いつまで経っても妊娠できず、時間もお金も無駄にしてしまいます。

精液検査では何を調べるの?

不妊治療ではさまざまな検査が行われます。女性の場合は、内診やエコー、MRI検査など複数の検査が必要です。一方、男性の一般的な不妊治療検査は、精子検査です。検査前2~7日の禁欲期間を経て、用手にて精液を採取します。検査要項は、精液量や精子濃度、精子運動率、精子正常形態率の4つです。精子の質は毎日一定レベルにあるわけではなく、日ごとに変化します。たとえ1回目で悪い検査結果が出たとしても、別の日に別の検査結果が出ることも珍しくありません。そのため、男性の精子検査は1カ月に最低2回は行います。もし1回目と2回目の検査結果が大きく違った場合は、3回目の検査を行います。精液の採取は院内で行いますが、院内で採取しにくい場合は自宅でも採取可能です。家での採取は精液の温度を20~30度に保ったうえで、2時間以内に検査ができれば、結果に大きな違いは出ません。院内でも精液採取室が用意されており、プライバシーには十分気をつけている病院が多いので、気になる人はどのような状況で採取をするのか、あらかじめ聞いておくと良いでしょう。精子に異常がなければ、男性の検査はここまでです。もし精子に異常が見つかった場合は、診察や内分泌検査、染色体・遺伝子検査などを行い、不妊の原因を突きとめていきます。

精子の運動率が低いとはどの程度のこと?

精子の運動率とは、精液内の精子がどのくらい運動をしているかを表す数値のことです。運動率が高ければ自然妊娠の確率は上がり、低いと自然妊娠が難しくなります。採取した精子は400倍の顕微鏡下に置かれ、4つの項目に分けて評価していきます。Aは速度が速く、直進する精子、Bは速度が遅い、あるいは直進性が不良な精子、Cが頭部あるいは尾部の動きを認めるが、前進運動していない精子、Dが非運動精子です。運動率は、AとBの占める割合が全体の何%なのかで導き出します。WHO(世界保健機関)によれば、精子の前進運動の下限基準は32%以上、総運動率は40%以上となっており、これより低い場合は自然妊娠の可能性も低くなると見られています。また、精子の運動率は年齢が高くなると下がるといわれており、男性の年齢が35歳以上で1年以上妊活をしても子どもを授からない場合は、精子検査を受けるのが望ましいでしょう。運動率が低い症状を精子無力症といいますが、このほかにも不妊に関わる症状があります。射精はしても精子がいない無精子症、精液中の精子数が極端に少ない乏精子症、精子が死んでいたり受精能力がなかったりする精子死滅症などです。これらの症状を指摘された場合は自然妊娠が難しい状況ですので、早めに不妊治療に踏み切るようにしましょう。

運動率はいくら低くても人工授精で妊娠可能なの?

人工授精は子宮頸管カテーテルで精子を子宮内に送り込みますが、人の手でできるのはここまでで、あとは精子が自力で卵子のところへたどり着かなければなりません。精子の力が弱い場合に有効な人工授精でも、運動率がWHOの下限基準に届いていない場合、受精の確率はかなり低くなります。自然妊娠が可能なのは、総運動精子数が900~1500万個、人工授精が効果的なのは1000万個以上といわれています。総運動精子数500万個以上、運動率30%以上でも人工授精の効果があるといわれていますが、どちらかというと希少ケースです。もし精液検査の結果がだいぶ低いようなら、早めに体外受精へ切り替えるのもひとつの方法です。精子も卵子も年齢を重ねるごとに衰えていきます。若い年代ほど妊娠しやすく、年齢を重ねるほどに妊娠率は低くなっていきます。不妊治療も同様で、年齢の高い夫婦でも不妊治療をすれば必ず妊娠できるわけではありません。検査結果と医師の所見のもと6周期くらいまで人工授精を試みて妊娠できなければ、次のステップに進むほうが良いでしょう。特に年齢を重ねている夫婦の場合は、常に数年後の将来を視野に入れて不妊治療に臨むのが大切です。

精子の濃度や運動率を挙げることは不可能ではない

もともと持っている精子の質のほかに、日常生活や仕事でのストレス、疲労、禁欲期間の長さによって妊娠率は大きく変わります。もし不妊に悩み始めたり精子検査結果が芳しくなかったりする場合は、生活習慣を改めて健康的な生活を送るようにしてみましょう。バランスの良い食事と十分な睡眠、禁煙などを心がけて、生活を管理してみてください。不妊治療は精神的に辛く感じるケースも多いですが、悩みすぎるとかえってストレスになってしまいます。運動率を人工授精が可能な数値まで上げることができれば、妊娠の可能性も出てきますので、ぜひ明るい気持ちで臨みましょう。

参考URL
・日本産科婦人科学会「日産婦誌59巻4号研修コーナー3)精液検査」http://www.jsog.or.jp/PDF/59/5904-032.pdf
・一般社団法人日本生殖医学界「一般のみなさまへ 不妊症Q&Aよくある質問」http://www.jsrm.or.jp/public/funinsho_qa07.html
関連記事:「人工授精って自然妊娠とどう違う?前向きな不妊治療のための人工授精講座

F-visionの卵子提供プログラムの流れ

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